【IPO】438A インフキュリオンの新規上場

2025年10月24日、フィンテック領域の注目銘柄である「インフキュリオン」が東京証券取引所グロース市場に新規上場します。決済機能をあらゆる企業に組み込めるプラットフォームを提供する同社は、近年のキャッシュレス政策や金融デジタル化の流れを背景に成長が期待されており、このIPOも多くの投資家から関心を集めています。この記事では、インフキュリオンの会社概要、IPOオファリング概要、株価の見通し、特殊なポイント、まとめの5部構成で詳しく解説します。

会社概要・事業内容

インフキュリオンは2006年5月に設立され、「決済イネーブラー」として、企業が自社サービス内に決済・金融機能を柔軟に組み込めるようなプラットフォームを開発・提供しています。具体的には、カード発行・加盟店管理・請求書のカード払い機能などを含む統合決済基盤および関連コンサルティングサービスを展開。代表的なプロダクトには「Wallet Station」「Winvoice」「Xard」などがあり、大手企業の導入実績もあります。最近では、三井住友フィナンシャルグループの法人向け金融サービス「Trunk」の決済基盤を担うなど、大手金融機関との協業も進んでいます。業績面では、過去数期は赤字が続いていましたが、2025年3月期において連結売上高は71.74億円、当期純利益で黒字に転換しています。 

IPO時のオファリング概要

証券コード:438A

上場市場:東京証券取引所グロース市場

業種:情報・通信業

想定価格:1,450円~1,540円(平均1,495円) 

公募株数:1,700,000株 

売出株数:4,347,400株 

オーバーアロットメント(O.A.):907,100株 

オファリング株数合計:6,047,400株(公募株+売出株+O.A.分) 

想定公開規模:およそ104.0億円(想定仮条件価格平均ベースで O.A.含む) 

時価総額(上場時想定):304.5億円(想定仮条件平均価格ベース) 

仮条件決定日:2025年10月8日(水) 

ブックビルディング期間:2025年10月9日(木)~2025年10日15日(水) 

公開価格決定日:2025年10月16日(木) 

購入申込期間:2025年10月17日(金)~2025年10月22日(水) 

上場日:2025年10月24日(金) 

主幹事証券:SBI証券,JPモルガン証券 

株価についての考察

インフキュリオンのIPO想定価格は1,450〜1,540円で、中心値ベースの時価総額は約304億円、公開規模は100億円を超える大型案件です。単純なEPS水準でのPERは桁違いに高く、一見すると「割高感が強い」との印象を持たれるかもしれません。

しかし、この企業の評価軸は従来の利益ベースのバリュエーションでは測りにくい性質があります。インフキュリオンは、決済・金融機能を「サービスに組み込む」BaaS(Banking as a Service)型の事業モデルを持ち、導入が進めば進むほどストック型の収益構造が積み上がる特徴があります。現在の黒字転換はまだ序章であり、今後は「スケーラビリティが効くフェーズ」に突入すると考えられます。

株価の考察において重要なのは、短期需給と中長期ストーリーの二層構造です。短期的には、公開株数の多さや売出比率の高さが需給悪化要因となり、初値の跳ね上がり余地は限定的でしょう。投資家の多くはここで警戒心を持つはずです。しかし、中長期では「キャッシュレス決済・法人向けFintech需要の拡大」という社会的トレンドに強くリンクしており、顧客獲得数やAPI利用件数の増加がそのまま売上拡大につながる仕組みは、既存の金融関連IPO(マネーフォワード、freee、Finatextなど)と同じく、数年先を見据えたバリュエーションで評価されやすいと考えられます。

つまり、このIPOを単純な「割高か割安か」で語るのは不十分であり、むしろ「将来の市場シェア獲得戦争にどれだけ早くポジションを築けるか」という観点から、成長期待プレミアムを織り込む必要があるでしょう。

当該IPOの特殊なポイント

インフキュリオンのIPOが他案件と明確に異なるのは、以下の点に集約できます。

まず、黒字転換のタイミングでの上場 という点です。多くのFintech系IPOは赤字のまま「成長ストーリー」を武器に市場に挑みますが、インフキュリオンは最低限の収益性を確保した上での上場です。これにより、投資家は「赤字拡大リスク」と「成長余地」のバランスを比較的冷静に判断できます。上場後に市場が注目するのは「どのくらいのスピードで利益を伸ばせるか」でしょう。

次に、協業先の質 です。三井住友フィナンシャルグループをはじめとする大手金融機関との提携は、単なる顧客開拓ではなく「社会インフラの一部を担うポジション」を示しています。これにより、プロダクト単体での競争ではなく、業界全体のデジタルシフトに組み込まれる立場を確立しつつあります。このポジションは簡単に新規参入が取って代われるものではなく、まさに「経済圏インフラの一角」という意味を持ちます。

さらに、需給面での特殊性 も無視できません。売出比率が高いことは一見マイナス材料ですが、これは既存株主がキャッシュアウトしている裏返しでもあり、IPO後に経営の意思決定がより独立・柔軟になりやすい側面もあります。市場参加者にとっては「一時的な需給悪化」と「長期的な経営自由度拡大」のどちらを重視するかで判断が分かれるでしょう。

最後に、国内Fintech IPOの比較対象 という意味でも特異です。マネーフォワードやfreeeが「SaaS会計」という文脈で評価されたのに対し、インフキュリオンは「法人向け決済インフラ」という、より銀行や商取引に直結するポジションを取っています。これは収益化までのリードタイムは長い一方、定着後のスイッチングコストが極めて高く、結果として「長期的な安定収益」に結びつく可能性があります。

総じて、インフキュリオンのIPOは「短期の需給リスク」と「中長期の社会的ポジション確立」という二面性を持ち、それが投資家を悩ませる最大のポイントだと言えるでしょう。  

まとめ

インフキュリオンのIPOは、決済インフラを中心とするフィンテック企業として、これまでの赤字期を乗り越え、ついに黒字化とともに上場を果たす案件です。想定価格・規模・成長性・協業先など、ポジティブな要素は多くありますが、同時に公開株数の多さや売出株の存在、割高なPERなど、慎重に見るべきリスクもはらんでいます。投資判断としては、中長期的な成長期待を持てるかどうかが鍵となるでしょう。短期での初値狙いだけではリスクが高いものの、成長ストーリーを信じる投資家には魅力的な銘柄だと言えます。