株式会社AlbaLink(アルバリンク)は、いわゆる「訳あり物件」や空き家を買い取り、再生して流通に戻す不動産買取再販事業を展開する企業です。TOKYO PRO Market 上場企業としてトラックレコードを積み上げてきましたが、今回東証グロース市場へのステップアップ上場に踏み切ります。直近の業績は売上高54億円、当期純利益3.8億円規模まで拡大しており、空き家問題という社会課題と、収益性の高い買取再販ビジネスを両立させる点で、機関投資家・個人投資家ともに注目度の高い案件と言えそうです。
会社概要・事業内容
AlbaLinkは、不動産の買取再販事業を中核とする単一セグメントの会社です。特に、長期間放置された空き家や、権利関係・心理的瑕疵などにより通常の流通市場では扱いにくい「訳あり物件」にフォーカスし、仕入れ・再生・出口までを一気通貫で手掛けている点が特徴です。
収益構造としては、販売用不動産の取得費を中心とした売上原価に対して、一定のマージンを確保するモデルであり、2024年12月期には売上高54億4,023万円、営業利益5億5,298万円、当期純利益3億7,820万円を計上しています。売上高は前年の約29.9億円から約1.8倍に拡大しており、空き家・訳あり物件領域での仕入れ力と販売チャネルの強化が数字にも表れています。
同社は2023年11月にTOKYO PRO Marketへ上場した後、2025年にかけて第三者割当増資や新株予約権の行使、そして2025年10月14日の1:4株式分割を経て発行済株式数を8,133,200株まで増加させており、今回のグロース市場への上場は、いわば「PRO Marketでの実績を踏まえたセカンドステージ」という位置付けになります。
IPO時のオファリング概要
証券コード:
462A
上場市場:
東京証券取引所グロース市場
業種:
不動産業(不動産買取再販事業を営む単一セグメント)
想定価格:
1,060円(有価証券届出書提出時の想定発行価格)
公募株数:
50,000株(新株発行)
売出株数:
1,671,000株(引受人の買取引受による売出し合計)
オーバーアロットメント:
258,100株(野村證券によるOA上限)
オファリング株数合計:
1,979,100株 (公募50,000株+売出1,671,000株+OA258,100株)
想定公開規模:
約21.0億円 (想定発行価格1,060円ベースの公募・売出・OA総額:20億9,784万6,000円)
時価総額(上場時想定):
約86.7億円 (発行済株式数 8,133,200株+公募50,000株=8,183,200株 × 想定価格1,060円)
仮条件決定日:
2025年11月27日(予定)
ブックビルディング期間:
2025年12月5日(金)〜2025年12月10日(水)
公開価格決定日:
2025年12月4日(木)
購入申込期間:
2025年12月5日(金)〜2025年12月10日(水) (届出書上の「申込期間」と同一期間)
上場日:
2025年12月15日(月)
主幹事証券:
野村證券株式会社
株価についての考察
想定価格1,060円に対して、2024年12月期の1株当たり当期純利益は47.28円と開示されています。 これを前提にすると、想定PERはおおむね22〜23倍と試算できます。一方、1株当たり純資産額は113.69円であり、PBRベースでは約9倍台となります。
業績面では、売上高が約54.4億円と前年比+81%の高成長を示す一方、営業利益率は約10%と、典型的な不動産買取再販業の中では比較的高めの水準です。 ただし、在庫である販売用不動産を多く抱えるビジネスモデルである以上、金利環境や不動産市況の変化に対する感応度は高く、バリュエーションの水準を評価する際には、足元の好環境をどの程度「平準化」して見るかがポイントになります。
また、同社は2023年時点でTOKYO PRO Marketに上場しており、すでに一定の市場評価を受けてきた銘柄です。届出書上では2023〜2024年にかけての株価収益率が5〜7倍程度で推移していたことが示されており、今回のグロース市場向け想定価格は、PRO Market時代のマルチプルに対してプレミアムを乗せた水準と解釈できます。
浮動株に目を向けると、今回のオファリング株数1,979,100株は、上場時発行済株式数8,183,200株の約24%に相当し、そのうち約84%が既存株主からの売出しです。 需給面では一定の流動性は確保される一方で、既存株主の一部イグジットによる供給圧力や、ロックアップ解除後の追加売出しリスクにも留意が必要です。
当該IPOの特殊なポイント
まず押さえておきたいのは、「TOKYO PRO Market → 東証グロース」というステップアップ上場案件である点です。すでにPRO Marketで上場企業としての開示・ガバナンス体制を整えていることから、一般的なプレIPO案件と比べ、トラックレコードやIR体制に対する安心感は相対的に高いと言えます。一方で、PRO Marketでの既存株主構成を引き継いだまま、今回の売出しで一部の株主が流動化する構図となっており、「誰がどの程度売るのか」「主要株主の残存持分がどれだけ維持されるのか」は中長期の株価を占ううえで重要な論点になります。
第二に、オファリングの内訳を見ると、公募5万株に対して売出し167万1,000株、OA25万8,100株と、圧倒的に既存株主の売出し比率が高い点が挙げられます。 会社サイドに入る資金(公募による手取り)は約5,300万円規模にとどまり、成長投資のためのエクイティファイナンスというよりは、既存株主の流動化・出口ニーズを反映した色合いが強いディール設計です。この点は、成長投資ストーリーと株主リターンのバランスをどう評価するかという観点で、機関投資家の好みが分かれやすいポイントになります。
第三に、株式分割とストックオプションの設計です。同社は2022年・2023年・2025年と複数回にわたり大規模な株式分割を実施し、発行可能株式総数も3,200万株まで引き上げています。 これにあわせて複数の新株予約権(第1〜第5回)を発行しており、将来的な潜在株式の希薄化余地は一定程度存在します。ただし、届出書上では現時点での潜在株式はEPS計算上「希薄化効果を有しない」と判断されており、短期的なインパクトは限定的と見られます。
最後に、ビジネスの社会的インパクトです。日本では空き家が増加し続けており、老朽化や権利関係の複雑さから市場に乗らない物件も多数存在します。同社はこの「誰も触りたがらない不動産」を積極的に引き受けて流動化するプレーヤーであり、社会課題解決型の不動産会社というポジションを明確に打ち出しています。空き家・訳あり不動産というニッチながら巨大なマーケットで、どこまでスケールできるかが、このIPOの最大のテーマと言ってよいでしょう。
まとめ
AlbaLinkのIPOは、PRO Marketでの上場実績を背景としたグロース市場へのステップアップ案件であり、「空き家・訳あり不動産」という社会課題マーケットにフォーカスしたビジネスモデルが特徴的です。足元の業績は売上・利益ともに高成長を維持しており、想定PER22〜23倍という水準は、成長性とビジネスの特殊性をある程度織り込んだバリュエーションと整理できます。一方で、オファリングの大半が既存株主の売出しであることや、今後の潜在株式による希薄化余地、在庫リスク・市況感応度の高さといったネガティブ要素も無視はできません。
投資家としては、①空き家・訳あり不動産市場の中長期的な成長ポテンシャル、②同社の仕入れ・再生オペレーションの再現性とスケーラビリティ、③既存株主のロックアップ状況や売出し後の持分構成、の3点を丁寧に検証したうえで、想定〜仮条件レンジの中でどの水準までリスクを取るかを判断する必要がある案件といえるでしょう。



