ミラティブは、スマートフォン画面をそのまま配信できるライブ配信プラットフォーム「Mirrativ」を展開し、ユーザーが手軽に“配信者になる体験”を提供してきました。今回の上場は、アプリ事業の拡大だけでなく、クリエイターエコノミー全体に向けた事業変革を進める重要なステップとなります。
さらに今回のIPOには、もうひとつ大きな特徴があります。
未上場ラウンドでの企業価値(約585億円前後)から、IPO時点の想定時価総額(約140億円)まで評価が“ほぼ1/4”にまで落ち込んだ、いわゆるダウンラウンド型IPOであることです。
これは単なる評価低下ではなく、現在のクリエイター市場・スタートアップ市場の再評価局面を象徴する動きでもあり、ミラティブ自身が事業構造の転換点にいることを示しています。
会社概要・事業内容
同社は2018年に設立され、DeNAが運営していた「Mirrativ」事業を承継する形で本格的にライブ配信領域へ参入しました。スマートフォン一台で簡単に配信できる利便性と、アプリ内で配信者が多いコミュニティ構造が特徴です。
近年では、Mirrativのアプリ内だけでなく、YouTubeなどの外部プラットフォームで活動する個人VTuberに向けて、成長支援・収益化支援サービスを提供する領域へ踏み出しています。アプリ単体のKPIに依存せず、配信者の活動そのものを支える事業モデルへと変化し、クリエイターエコノミー全体の成長と連動できる構造へと進化を図っています。
この「活動全体を支えるモデル」へのシフトこそが、前回ラウンドからの大幅な評価見直し(585億円 → 140億円)の背景でもあります。ミラティブは単なる配信プラットフォーム企業ではなく、クリエイター支援の基盤企業としての再定義を進めている最中であり、その“再出発”のタイミングでIPOに踏み切ったと言えます
IPO時のオファリング概要
証券コード:472A
上場市場:東証グロース
業種:情報・通信
想定価格:850円
公募株数:1,176,400株
売出株数:5,643,600株
オーバーアロットメント:1,023,000株
オファリング株数合計:7,843,000株
想定公開規模:約66.6億円
発行済株式総数(上場時想定):166,270,400株
時価総額(上場時想定):約140.3億円
仮条件決定日:2025年12月2日
ブックビルディング期間:2025年12月11日~12月16日
公開価格決定日:2025年12月10日
購入申込期間:2025年12月11日~12月16日
上場日:2025年12月18日
主幹事証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券・大和証券(共同主幹事)
株価についての考察
想定価格850円は、足元の収益性改善やWeb決済比率の向上、サーバーコストの最適化といった構造的な改善を踏まえると妥当な水準にあります。利益率が過去より改善しやすい環境が整ってきており、決して割高な設定ではありません。
一方で、今回のIPOは
前回の未上場評価(約585億円)から“140億円へ”という大幅なダウンラウンド
となっているため、ここには市場環境・事業進捗・投資家評価の三つの構造的要因が表れています。
2020〜21年のVCバリュエーション高騰の反動 クリエイター市場の収益性の再評価 ミラティブ自身が事業モデル転換期にあること
こうした背景により、IPO市場で“期待先行の評価”を残さないよう、より現実的かつ保守的なバリュエーションでの上場を選択したと解釈できます。
短期的には需給の重さ(売出の大きさ)が意識されますが、その代わり“実力と事業モデルの変化”が可視化された時に再評価されるという余白が残された銘柄とも言えます。
当該IPOの特殊なポイント
今回のミラティブのIPOには、以下の3つの特徴があります。
① 事業モデルを“再定義”したタイミングでのIPO
Mirrativ単体の成長だけでなく、外部VTuber支援・クリエイターバックエンドなど、複線的な事業モデルへの転換期にあります。
この“新たな事業の本丸”がまだKPIに全面反映されていないタイミングでの上場であるため、市場評価も保守的になりやすい構造があります。
② ダウンラウンドIPOであるという事実
届出書から逆算される前回ラウンドの普通株換算価格(3,404円)と発行済株式数を掛け合わせると、前回評価額は約585億円前後。
そこから今回のIPOは 約140億円。
市場が “成長ストーリーの鮮度”に慎重な姿勢を見せていることを示しており、同時に クリエイター市場の期待バブルの後処理が完了した とも言える局面です。
③ 大量売出により、市場の売り圧がIPO後に残りにくい
売出が公募の約5倍出ているのは、既存株主(特にVCファンド)の持分調整が大きな目的です。
短期の初値は重くなりますが、上場後の売却圧力が残りにくい“軽い株主構造”に再設計されるメリットがあります。
まとめ
ミラティブのIPOは、事業構造の転換と市場再評価が重なる極めて特徴的な案件です。
配信者が自然発生する唯一のプラットフォーム構造 外部VTuber支援という高粗利の伸びしろ クリエイターバックエンド(OS化)への潜在的拡張余地 過去のバリュエーションをリセットし、再評価余白を残した上場
これらを踏まえると、ミラティブの本質は“現在のKPI”ではなく、“未来に生まれる配信者とクリエイターがつくり出す総量” にあると言えます。
前回585億円 → 今回140億円という“大幅ディスカウント”は、悲観ではなく、むしろミラティブが 新しい視点で再評価されるための初期条件 としての側面が強い。
クリエイターエコノミーが引き続き拡大する中、ミラティブがどこまで「配信者支援のインフラ」として成長できるか——
市場はそこを軸に、今後の評価を見極めることになるでしょう。



