近年、働き方改革や教育ICT化の加速により、オフィス用品やICT周辺機器を手がける企業への注目が高まっています。その流れの中で、「ライオン事務器」が東京証券取引所のスタンダード市場へ新規上場(IPO)することが承認されました。本日はこのIPOの概要、特徴、株価の見通しなどを整理し、投資家の皆様に分かりやすくお伝えします。
会社概要・事業内容
株式会社ライオン事務器は、1921年に法人として設立され、その起源は1792年に創業した筆墨商にまで遡ることができます。本社は東京都中野区に位置し、代表取締役社長は高橋俊泰氏です。事業内容は幅広く、文具や事務用品、オフィス家具や事務機器の製造販売を中心に、オフィス環境のデザインや施工、内装工事なども手がけています。さらに、ICT機器を文教市場向けに提供しており、学校や自治体への納入やネットワーク構築・保守サービスなども展開しています。加えて、ECプラットフォーム「ナビリオン」を通じてオンラインでの販売を強化し、従来の販売店や卸を中心としたチャネルに加え、デジタル化による販路拡大も進めています。メーカー機能と商社機能を併せ持ち、公共案件や教育ICT分野に強みを持つ点が同社の大きな特徴です。
IPO時のオファリング概要
証券コード:423A
上場市場:東証スタンダード
業種:卸売業
想定価格:209円
公募株数:1,500,700株
売出株数:2,765,700株
オーバーアロットメント:639,900株
オファリング株数合計:4,266,400株
想定公開規模:約10.3億円
時価総額(上場時想定):約65.6億円
仮条件決定日:2025年9月25日
ブックビルディング期間:2025年9月29日~10月3日
公開価格決定日:2025年10月6日
購入申込期間:2025年10月7日~10月10日
上場日:2025年10月15日
主幹事証券:みずほ証券
株価についての考察
ライオン事務器のIPOにおける想定価格は209円と、非常に低位の水準に設定されています。低価格IPOは個人投資家にとって参加しやすく、初値形成においても需給次第では一気に資金が流入しやすい特徴があります。ただし、本件の場合は以下のような複数の要素が株価形成に影響します。
(1)需給面の分析
公募株数は1,500,700株に対し、売出株数は2,765,700株と、既存株主による売出比率が高めです。 IPOでは公募比率が高いほど成長資金への期待が持てますが、売出比率が大きい場合、既存株主の換金色が強いと受け止められやすく、初値において需給の重しとなることがあります。 総公開株数4,266,400株は中規模の水準であり、需給妙味は限定的です。流通量が一定以上あるため、需給タイト型の「初値暴騰」はやや起こりづらい環境といえます。
(2)バリュエーションの観点
想定時価総額は約65.6億円。卸売業に分類される同業上場企業と比べても、相対的に小型。 PER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)は仮条件決定後により明確になりますが、業績が安定的である一方で高成長を示していないため、割安感を強調するほどの材料は乏しいと考えられます。 ただし、低位株であるため、初値以降も値動きが軽く、短期的な投機資金の流入余地はあります。
(3)同業・類似IPOとの比較
文具や事務用品の領域は参入障壁が低く、価格競争にさらされやすい分野です。プラス、コクヨ、内田洋行といった上場企業と比較すると、ブランド力や規模の面では劣後します。 ただし、ライオン事務器は学校・自治体向けのICT事業を持っており、教育市場という成長分野に一定のポジションを築いている点は評価ポイント。公共案件は収益の安定性を高める傾向にあります。 同規模の中小IPOと比べると、ストーリー性に乏しい分、短期での「人気化」は難しいですが、価格帯の低さから個人投資家が参加しやすく、初値での需給バランスに依存する展開になりやすいです。
(4)短期・中期の見通し
短期的視点:公開価格前後での初値形成が予想され、地合いが良ければ10〜20%程度の初値プレミアムを狙える可能性があります。需給の重さを考慮すると、大幅な初値高騰は期待しづらいです。 中期的視点:教育ICTやEC拡大といった成長余地はあるものの、既に成熟した事務用品市場の比率も高いため、構造的に高成長銘柄とは言えません。中長期での株価推移は「安定株」「ディフェンシブ株」として評価される可能性が高いでしょう。
(5)リスク要因
公募比率が低いため、成長資金調達という観点では物足りず、成長ストーリーに乏しい点はネガティブ。 物流コストや原材料価格の上昇に直撃を受けやすい業種であり、マージン圧迫リスクがある。 上場後に新規の成長施策や収益改善策が示されなければ、株価は公開価格近辺で安定推移する可能性もある。
総合評価
ライオン事務器のIPOは「安定感があり低リスクで参加できるが、爆発的なリターンは見込みづらい案件」と位置づけられます。
IPOの初値狙いというより、公共案件を背景にした「中期安定株」として資産の一部を置く戦略に適していると言えるでしょう。
当該IPOの特殊なポイント
ライオン事務器のIPOにはいくつか注目すべき特徴があります。第一に、同社はメーカー機能と商社機能を兼ね備えたユニークなビジネスモデルを持っており、自社で文具や家具を製造しながら、他社製品の仕入れ販売も行うことで幅広いニーズに対応できる体制を築いています。これにより、単なる販売事業にとどまらず、製造原価や流通コストを調整しながら利益構造を最適化できる点が強みとなっています。
第二に、文教事業の存在感が大きい点が挙げられます。同社は教育機関や自治体向けにICT機器の提供やネットワーク構築・保守を手掛けており、政府が推進するGIGAスクール構想などの教育ICT投資の拡大を直接的な追い風として取り込むことが可能です。公共案件を多数手がけてきた実績を持つことから、安定的な需要の確保が見込まれます。
第三に、販売チャネルの多様性も重要なポイントです。従来型の販売店や卸経由の商流に加えて、ECプラットフォーム「ナビリオン」を通じたオンライン販売を展開しており、デジタル化による販路拡大と効率化が進められています。オフラインとオンラインを両立させた販売戦略は、今後の成長余地を広げる要素といえるでしょう。
さらに、IPOの規模自体は約10億円と比較的中規模であり、個人投資家にとっても参加しやすい案件となっています。その一方で、大型案件のような機関投資家主導の需給ではなく、市場の地合いや個人投資家の注目度によって初値の動きが左右されやすい性質を持っています。
総じて、ライオン事務器のIPOは事務用品メーカーとしての安定基盤に加え、教育ICT分野やECチャネル拡大といった成長要素を兼ね備えている点に特徴があるといえるでしょう。
まとめ
ライオン事務器のIPOは「安定性」を重視する投資家向けの案件です。低価格帯で参入しやすく、教育ICTや公共案件の需要が見込める一方で、爆発的な成長は期待しづらい点に注意が必要です。市場環境を見極めた上で、短期で初値を狙うか、中期的に安定株として保有するかを戦略的に判断することをお勧めします。




